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%e7%b2%be%e7%a5%9e%e3%81%a8%e6%99%82%e3%81%ae%e9%83%a8%e5%b1%8b:VOLUME:12 「これは・・・みたいだね」を身につけてみる

2019.12.24

 

 

「練習」によって身につけた思考回路でひとつ「これはホント、役に立ったなぁ」っと思う「ツカえる思考回路」がある。

それが「これはまるで・・・みたいだね」っと「何かに例える/何かに置き換える」という思考回路。

 

これはまだデザイナーを始めたばかりの頃。

その当時めちゃめちゃカッコイイCDのジャケットデザインを作りまくっていたコンテンポラリー・プロダクション(CTPP)のアートディレクターである信藤三雄さんに憧れて、信藤さんの作品集や掲載されている雑誌を買い漁って勉強しまくっていた。

そんな時、見つけた信藤さんの言葉の中に、こんな一節があった。

 

「デザイナーというのは、あるモノを何かに置き換えて、それをビジュアルとして表現する仕事。だから「〜〜みたいだね」と絶えず考えることがすごく大事です。(確かこんな内容だった)」

 

今思えば、グラフィックデザイナーという仕事はまさに、そういう仕事だと思う。

何か1つの商品があって、その商品の特徴や素晴らしさをいかにわかりやすく、明確に、時にインパクトを持って消費者の人たちに「伝える」ことができるか?

そしてそれは多くの場合、長い説明文などなしに、ビジュアルのみで、もしくはビジュアルと短い言葉のみで。

それを多くの商品が並ぶ中でも、街中の雑踏の中でも、パッと見で、一瞬で。

デザイナーはそれを「ビジュアル」という制約の中で考える。

 

「冷たいや熱い」という「体感」をビジュアルでどう表現するのか?

「清涼感や爽快感」といった目には見えない「感覚」をどうビジュアルで表現するのか?

実際に手に取れない商品を、触ることができない感覚的なことを「ビジュアル化」して伝えるために、デザイナーはそれを何か別のモノに「置き換える」ことで表現することが多い。(もちろん、他にもあらゆる表現方法があるけれど)

 

簡単に言えば・・・

「大きい」・・・・ゾウやクジラ、山、空。

「小さい」・・・・アリ、赤ちゃん、子犬、子猫

「首を長〜くして待つ」・・・・・キリンなどなど

 

その商品や、そのアーティストが持つ最大の魅力をいかにビジュアル化してみんなに届けるか?

そのために大事な能力の1つが「何かに置き換える」「何かに例える」という「みたいだね」の能力・・・

 

 

「お、そうか。確かに・・・・」

そして何にでも影響されやすい単純バカな僕は、その日からさっそく「練習」を開始したわけだ。

 

街を歩いても、電車に乗っても、空を見上げても、家の中でも。

何かを目にするたびに、無理やりだろうがなんだろうが、意識して、何かに例えてみる。呟いてみる。

 

「う〜ん、この空は・・・」

「このリンゴは・・・」

「この電車の揺れる感じって・・・」

「あの人の顔って・・・(もちろん心の中で)」

 

実際にやってみると、最初は全然うまく例えられなかった。

でも、別にそれでいいのだ。

だって、誰に言うわけでもなく、自分の心の中で思ってるか、そっと呟くだけだから。

「これはまるで・・・みたいだな」

しょうもないのしか出てこなくても、ひたすら繰り返す。

思いつくたびに、なるべくたくさん。

 

でもこれも、一ヶ月も繰り返していると本当にいつの間にか、自転車に乗れるようになってくる。うまく例えられるようになってくる。

何を見ても「これって〜〜みたいだよね」と誰かに言っている自分がいるのに気づくことが多くなってくる。

そうなればしめたもの。

今でももう20年以上もそんなことばかり考えてるから、ちょっとした「置き換えマスター」だ。

 

そうやってデザイナーとしての必要に迫られて身に付けた思考回路だったけれど、この習慣は僕に思わぬ「副産物」を与えてくれたように思う。

 

それは「自分が相手だったらどう感じるか?」と、相手の立場に自分を「置き換えて」考えれるようになったこと。

「俺があの人だったら、きっとこう感じるだろうな・・・」そんなふうに。

 

そして、自分の伝えたい内容を「相手にわかりやすい」ように「置き換えて」話せるようになったこと。

「これって、料理に例えるとこんな感じだよね」

「これって、バスケに例えるとこんな感じだよね」そんなふうに。

 

自分の伝えたいことをより相手に「わかりやすく」伝えるために。

これはこのお店だけじゃなく、誰かと一緒に仕事をするために、一緒に過ごす上でも、すごく役に立っている気がする。

 

これは・・・みたいだね。

そんな思考回路も、ひとつ身につけてみるといいかも。

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