story:Volume:01 「はじまり」
2018.10.11
「お店と工房と我が家」
それがひとつのスペースにすべてある。
そんな場所で暮らしてみたい。
そんなことを初めて考えたのは20代前半の頃だと思う。
それは一件の家具屋さんの記事を雑誌で見たのがきっかけだ。
大阪にある、今ではもしかしたら日本で一番有名かもしれない家具屋さん。
そう、「TRUCK FURNITURE」との出会いが、僕の人生を大きく動かした。
雑誌で見たトリさんとヒリさん夫婦の生活は、当時の僕の憧れそのものだった。
家と工房とお店が1つになった建物。その中で愛犬バディと共に暮らす二人の風景。
雑誌やカタログを穴があくほど眺めて、時には自宅の家具を真似して作ってみたりした。
そしてそのうち、「俺もこんな場所に住んでみたいな。こんな場所を作ってみたいな」
それが当時の目標になった。
とはいえ、当時の自分といえば、アニキや仲間とBARを始め、そのあと勢いで出版社を立ち上げてはみたものの本は全く売れず、借金は山盛りで給料もなく、憧れのスペースを作るどころか飯を食う金にも困るような生活だった。
そこで・・・だ。
あんまり遠い目標を眺めていてもテンションが上がらないので、まずはちょっぴりと、いや、大幅に目標設定を下げてみた。
「本を売って借金を返し、少し金を貯め、まずはTRUCKの家具を買いに大阪へ行くぞ!」
まずはそこからだ。
そこからだ、なんて言いつつも、ようやく本が売れ、山積みの借金を返済し、欲しかった家具をいくつか買う金を貯めるのに、なんと6〜7年もかかった。
その時30歳。
思い返せば20歳の時にBARを始め、訳も分からぬまま出版社を始めて借金まみれの10年間。
睡眠時間だけはナポレオンにも負けてないが、その他の商才を含む能力面では全敗すぎて自分のアホさには呆れるばかり。
ま、それでも、ようやく掴んだ「プラスのお金」。
さて、何に使おうか・・・?
そんなことは言うまでもなく決まっていた。
文字通りその金を握りしめ、大阪行きの新幹線に乗って、いざ。