story:Volume:04 「発想の枠」
2018.10.13
ラフスケッチや「好きなもの」をカメラやノートに日々溜め込んでいく。
それは積み重なっていくと、次第に「自分の理想の空間」としての輪郭を表してくる。
今でも何気なく続けているこの作業は、モノづくりを生業とする僕にとってはある意味一番楽しく重要な作業になった。
「何をやっても、いくらお金を使ってもいいとしたら何をやるか?」
発想のスタートはいつもそこから。
もちろん、それがデザインの仕事であれ、自分のお店であれ、実際には「予算」というものに限界があるわけで(稀にない場合もあるけど)、その中で優先順位をつけて予算の枠に「収めていく」という作業をしていくことがほとんどだけど、あらかじめ「枠」を設定してから発想をスタートさせるクセがつくといつもその枠組みの中でしか物事を発想できなくなるような気がするし、そうなると「じゃぁ、全部ご自由にどうぞ」と枠を取っ払われた時に喜ぶよりも逆に戸惑ってしまいそうな・・・そんなわけで、何かを作り始める時、発想のスタート時点では枠は取っ払うようにしている。
「なんでも作っていいとしたら、何を作ろう?」・・・そんなふうにワクワクと考えられる自分ではいたい。
この方法で発想を膨らませていくことには、もう1つ良い点がある。
自分の膨らませた発想を、実際に予算内に「収める」時に、だいたい問題になるのが「お金の問題」と「時間の問題」だ。
作るものすべてに好きなだけ良い材料と良い加工法を使えば、当然予算はオーバーし、丁寧に手間をかければかけるほど時間がかかる。
「金はあるけど時間がない」「時間はあるけど金はない」「どっちもない」などなど、実際にはいろんな状況に直面するけれど、自由に膨らませた発想をどうにかこうにか、その枠の中に少しでもたくさん「押し込む」ことはできないか?
その「悪あがき」こそが「アイディアや工夫」なんだと思う。
その昔、Goro’sのゴローさんがニコッとしながら嬉しそうに語った言葉がすごく印象に残ってる。
「貧乏はいいよ。貧乏は工夫する」
お金がなくたってアイディアがあれば出来上がるものがある。
時間がなくたって、ちょっとの工夫で出来上がるものがある。
予算や時間の枠から「はみ出した発想」を持つからこそ生まれる悪あがき。
その悪あがきが生み出す様々なアイディアや工夫が、結果的に予想を超えたモノを生み出すことがある。
「お金がない」「時間がない」と諦めてしまう前に、少しでも理想に近づくためにまずは足掻いてみる、考えてみる。
諦めずに考えてみれば、どんな状況にも「突破口」は必ず用意されてる。
そんなふうに思う。
SOULTREEという空間は、この場所を作った大工チームのみんなのそんなアイディアや工夫の集合体でもある。
「貧乏はいいよ。貧乏は工夫する」
どんな状況に置かれても、いつもそんなふうに笑って言える自分でいたいな。