story:Volume:08 「そもそも・・・2」
2018.10.19
問題その弐:「そもそも図面が描けない」
僕はグラフィックデザイナーではあるけれど建築士ではないから、イラストレーターなどのソフトを使って「間取り」のようなものは描けても、それを建築図面にすることなんて全くできなかった。
平面の図は描けても、CADなどを使ってそれを立体的に描くこともできなかっった。
撮りためた写真、書きためたノート。
物件が決まらないことには細部まで詰めることはできないけれど、大まかなイメージは頭の中にある。
普通はそれを建築デザイナーや空間デザイナーに伝え、図面化し、施工してもらい・・・・となるんだろうけど、初めから僕の中にその選択肢はなかった。
ひとつは、単純に「お金がかかりすぎる」から。
多少なりとも飲食店やグラフィックデザインなどをかじってきた経験から、デザインから施工まで、すべてを人に任せたら、どう考えてもその金額を準備できるイメージは湧かなかった。
でも、お金のことよりも何よりも、僕は、自分の好きだと思える空間を「自分も参加して」作ってみたかった。
極力細部まで、自分のイメージを、材料や色や、様々な加工法まで、ひとつひとつ、自分の口で伝えながら、イチから一緒に作ってみたかった。
そして、あわよくばその間に色々な技術を教わって「自分もできるように」なってみたかった。
だから、細かい図面を描けようが描けまいが、もともと自分の頭の中にあるイメージを「誰かに丸投げする」という選択肢はなかった・・・・のだ。
問題その参:「そもそも自分で作れない」
「日曜大工」としての経験はゼロではないけれど、それはせいぜい電動ドライバーと電動丸ノコを使って簡単な家具を作る程度のもので、とてもじゃないけど自分で自分のイメージする空間をカタチにする技術は持ち合わせてなかった。
建築図面も描けなければ、頭の中のイメージを自分でカタチにする技術もない。お金もない。
この時点ではほんと、必要なものは何も揃ってなかった。
ただ、頭の中に「イメージ」だけがあった。
こうして書いてると「じゃぁ、どうすんだよ!」と自分に突っ込みたくもなるが、
お金以外の悩みに関する答えは、意外に早く解決した。
あの時出した、自分なりの結論はこうだ。
まず、物件が決まったら、大まかな間取りの図面は自分で描こう。
その間取りをもとに、今度はひとつひとつ細かい部分を大工さんと話し合いながら、イメージを共有しながら現場で一緒に作っていくしかない。
そのためには、その途方もなく「面倒臭そう」な作業工程に付き合ってくれる「仲の良い大工=友達(マブダチレベル)」が最低一人は必要だ。
そいつにとことん付き合ってもらい、自分も付き合いながら、同時に少しでも技術を教わり、少しでも戦力になるように日々成長していくしかない。
それをコツコツと繰り返していけば、時間はかかるだろうけど、自分の理想の空間が必ず出来上がるはず・・・・
正確な図面もなく、イメージしかないものをひとつひとつ話し合いながら「カタチ」にする作業なんて、面倒臭すぎて普通の「知り合い」にはとても頼めない。
でも、この時、自分の中では一人だけいたんだ。
「こいつなら」と思えるヤツが。