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story:Volume:18 「一本の電話」

2018.11.23

自分の直感を信じ、その場で不動産屋さんに仮申込の意思を伝えた後、「もう少し外から眺めてみます」と不動産屋さんを見送り、一本の電話をかけた。

 

「あ、もしもし・・・」

「おう、ミノルくんか、ひさしぶり!」

 

電話の相手はヨモさんとレイちゃん。

ヨモさんは沖縄「トモ祭り」で作ったツリーハウスでも棟梁を務めたトモの兄貴分であり大工仲間の一人。

レイちゃんはヨモさんの奥さんであり相棒、そして鉄を自在に操るアーティスト。

これは大工のトモが導いてくれた不思議な縁。

大工の相棒を失い完全に折れかけていた心に再び火を灯してくれたトモの仲間や先輩たちとの出会い。

福井でのお通夜、四十九日のtoco.での集まり、そして沖縄でのトモ祭りとツリーハウス作りを通して、それまでは「顔見知り」でしかなかった二人とよく顔を合わせ話す時間が増えた。

そして何より、気が合った。

この二人との改めての「出会い」が、トモが僕に送ってくれた最大の贈り物になった。

だから物件が見つかったら「棟梁」はヨモさんとレイちゃん二人のコンビに任せようと決めていた。

 

 

<右がヨモさん、真ん中がレイちゃん、左はトモのお師匠でもあったツリーハウスビルダーの小林崇さん>

 

 

ふたりは、このとんでもない物件を見て、なんて言うんだろう・・・・?

 

直感だなんだと調子の良いこと言って仮申込をしたのはいいが、本当にこんな物件を人が暮らし、お店がオープンできるまでに改装できるのか?

もちろん、莫大な資金を投入すればなんだってできるんだろうが、そんな話は置いといて、リアルに、自分のキャパシティー内で可能なのか?

その自分の「キャパシティー」ってのも、この時点ではだいぶ曖昧なんだが、そもそも、その判断をする知識も技術も持ち合わせていない今の自分にとって、ヨモさんとレイちゃんの「反応と判断」は今後の状況を大きく左右する大事なポイントだ。

ひとまず挨拶もそこそこに、気になる物件が見つかったので写真を送る旨を伝え、先ほど撮ったばかりの「ヤバイ写真たち」を一斉に送る。

 

しばらくしてヨモさんからの着信。

 

「おーう、写真見たよー」

「見ました〜? かなりカッコイイんですけど、か・な・り・ヤバイ物件なんすよねぇ・・・・」

「うん、ヤバイな・・・笑」

「で・・・・これ・・・・いけますかねぇ・・・・?」

 

このあとの一言が、きっと運命の分かれ道だ。

 

ドキドキ・・・・

 

 

 

 

「いけるんちゃう?」

 

 

え?

そんな・・・あっさり・・・・?

 

 

おいおい、アンタ、ちゃんと写真見たんかい! あのとんでもない写真たちを〜〜〜〜!

っと思わずツッコミを入れたくなるほどの予想外で、アッサリとした返答。

 

「いけるんちゃう」って・・・・

 

 

全く逆の、ネガティブな反応を予想していただけに、

むしろ「いやいや、大変なのはわかるんですけど、ちょっと頑張ってみましょうよ」なんてセリフで説得しないといけないかなぁ、なんて思っていただけに、

全く「意識の外側」から飛び込んできたこの一言に頭がパニクったんだ、きっと・・・・

 

 

「あ、そうすかぁ。じゃ、借りますね」

 

っと思わず反射的に「口が滑って」しまったのだった・・・・

 

 

この時点で、「仮申込」は「申込」に変わり、

おそらく時間がたつほどに膨らんでくるであろう「迷い」や「恐れ」を「いけるんちゃう」の一言ですっ飛ばし、

舞台は一気に「交渉の場」へと移るのだった・・・・

 

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