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story:Volume:27 「いきなり迫られた決断」

2019.1.20

解体作業が終わり、いよいよ本格的な工事が始まる。

ワクワク・・・・という気持ちとは裏腹に、ここ数日、必死にパソコンの前にかじりつき、図面とにらめっこする日々を過ごす僕がいた。

 

ヤベ、マジで時間がない・・・・

 

大工チームのみんなを迎える前に、ひとつ、大きな仕事が残されていた。

それが、「床のコンクリート打ち」だ。

ミキサー車が来てドバドバ〜っとコンクリを流して床を固める、あれだ。

普通の人生を歩んでいれば、専門職の人でない限りめったにお目にかかることはないであろうこのレア体験。

お店づくりの幕開けは、まさにそんな作業から始まった。

 

とはいえ、もちろんこのコンクリ打ちの作業を自分でやるわけではない。というかできるわけがないのだけれど、この作業を進めるためには、「僕が決めなければいけない事」が山ほどあったのだ。

 

それは・・・・「配管の位置決め」だ。

コンクリートを流し込み、床を作るためには、その前に水道の給排水の「配管」をあらかじめ仕込んでおく必要があった。

「あらかじめ仕込んでおく」ということは、この時点で「どういう間取りにするかを決める必要がある」ということだ。

カウンターがどこで、キッチンがどこで、トイレや、その他スペースの手洗い場がどこかを「決定する必要がある」ということだ。

しかも、その細かい向きや位置までも・・・・

 

これには正直、面食らった。

おいおい、いきなりすぎるだろ・・・・

 

まさか、この初期の段階で間取りや内装に関してここまで「細かい決定」を迫られるとは夢にも思ってなかったからだ。

 

もちろん、物件の契約交渉の時点から間取りや内装イメージについては考えていたし、ある程度図面化もしていた。

でもそれは、まだまだ「イメージ」の段階であって、例えばカウンターの端から何センチの所にこのサイズのシンクを置き、その横にはこの容量の製氷機を置いて・・・なんて、実際に「その場で動き、働くこと」をイメージして細かく描かれた図面ではないのだ・・・飲食店経験があるといってもそれはバーで働いていただけであって、本格的なキッチン経験すらない。エスプレッソマシーンなんて触ったことすらない。

 

実際、わからないことだらけだった。

何人のお客さんが入り、それに対してどれくらいの容量の製氷機が必要になるのか?

どれくらいの大きさの何槽のシンクをどこに配置したら働きやすいのか?

食洗機は? エスプレッソマシーンは・・・・・

それらの配置を決め、実際に購入する機材のサイズなどを調べる必要があった。

 

そういう細かい点については、正直、「最後にゆっくりとひとつひとつ考えればいいや」そんな気持ちでいた・・・・が、現実は待ってはくれない。

いきなり突きつけられたリアルに戸惑いながらも「締め切り」は目の前だ。

嘆いていても始まらない。とにかく「決める」必要があった。

店長になるハルキを捕まえて、できる限りのシュミレーションを頭の中で描きながら、

昼でも薄暗い廃墟の中で(まだ電気すらない)、土の地面に棒で線を描き、もろに「2D」のお店の中を歩きまわり、働いてみる。

そして、キッチンとカウンター、そしてトイレの位置や工場スペースなどの配管の位置を決めた。

 

 

これがこの時考えたキッチン内部の図面。かなりお粗末・・・

これが実際に働きやすいのかどうかは、キッチンのスタッフに聞いてみてください・・・

 

 

ついでに1F全体を描いた図面がこちら。完成とはだいぶ違う・・・

カフェ部分の間取りに関しては大きく変更されている。入り口の場所すら違うし・・・ま、そこら辺の話はおいおい。

 

 

現時点で考えうる限りのシュミレーションをして、全力で取り組み決定したこととはいえ、業者さんに図面を手渡した後も、どこか不安は拭えなかった。

お店ができ、営業を開始した後に、どんな不都合が出るのか・・・?

それが自分でも予測できなかったからだ。

そして、それを後から「作り変える」ということがいかに大変な作業かってことが容易に想像がついたからだ。

 

ま、あとは実際に営業してみねーとわからねぇしな・・・・

この時はそう考えるしかなかった。

 

後にお店が出来上がり、実際に営業を開始すると、それほど多くはなかったけれど、実際にいくつかの不都合はあった。

キッチンやカウンターの床には排水溝をつけて、デッキブラシでゴシゴシこすって水をドバーッと流して簡単に掃除できるようにすればよかったなぁ・・・とか、エスプレッソマシーンの位置はここじゃなかったなぁっとか、庭の水道にも排水溝をつけるべきだったかなぁっとか・・・その他いろいろ。

 

この時点の自分を責める気は無いけれど、「次」には活かさなければいけない反省点だった。

もう少し「時間」をかければ、辿り着けた答えもあったと思うから。

あらかじめ分かっていれば、予測できていれば、防げたミスだと思うから。

それは「次」に活かしたいと思う。

 

床のコンクリート打ちからお店作りを始める人が果たしているのかはわからないけれど・・・・そんな人がいたら、ぜひご注意くださいね。

 

専門の人から見たら「おいおい、そんなの当たり前だろ」と笑われるようなことかもしれないけれど、「決めるべき事柄の順序」も知らずボケっとしてたド素人の僕にとってはまさに・・・ヒョウタンカラコマ・・・・じゃなくて・・・セイテンノヘキレキ。

さぁ、つくろうぜ〜!っなんていうおチャラけた空気をすっ飛ばし、いきなり緊張のズンドコに落とされた「静かな大事件」でありましたとさ。

 

でも、この事件のおかげで、なかなか決めきれずにいた細かい部分が決まった。

どこか逃避していた「全てを自分で決める必要がある(逆に考えれば決めることができる)」という現実を直視させられた。

おかげで図面は一気に「リアルな数字」で埋められた。

これは実際に工事を始め、進める上で、(当然のことながら)ものすごく大事な作業だった。

そういう意味では、やっぱり「ヒョウタンカラコマ」だったかも・・・・

 

まぁ、もう図面も渡したしちゃったし、今さら変えられなことを悩んでいてもしょうがない。

やるだけやって、出たとこ勝負はいつものことだ。

さぁ、あとはドバァ〜っと流し込んで固めちゃって〜!

 

次はいよいよ、ミキサー車、来るぞ・・・・

 

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