story:Volume:29 「最低限必要なもの」
2019.2.4
毎年明け恒例の強烈な風邪にやられしばらく寝込んでおりました・・・さてさて再開。
2012年が始まり、いよいよ棟梁ヨモさん&レイちゃんたちがやってくる。
期待と不安に胸を膨らませつつ、その前に1つ、やっておきたいことがあって、その日は車で出かけた。
みんながやってくる前に、どうしてもしておきたかったこと。
それは、「自分の工具」を手に入れることだ。
正直、この時点で工事期間がどのくらいかかるのか?はさっぱり見当がついていなかったが、「入れる限り工事には毎日参加する」というのは初めから決めていた。
もちろん、自分の理想の空間を作りたくて始めたことではあるけれど、それと同じくらい「自分で作れる」ようになってみたかったから。
ほんの数カ月でも、毎日作業に参加して、朝から晩まで、手伝い、教わりながら、ゼロから自分の家とお店の完成までの「全行程」を間近で体験してみたかった。そうすることで、今まで出来なかったことや、考えもしなかったことができるようになり、想像できるようになる気がしていた。
だからこの物件は、自分の理想の空間づくりであり、同時に、自分から自分へ贈る最大の贈り物、自分史上最大規模の「ワークショップ」だった。
結果的に、工事は実に半年にも及び、その間、明確な「休み」は1日もなく、自分で記憶してる限りではおそらく毎日、現場にいたような気がする。
でも、このトライアスロンばりに過酷な半年間のワークショップで、そして最高の「講師陣」に囲まれて育てられた僕は、おかげさまで「日曜大工の王様」に変身した。
木工も鉄工も左官も水道の水漏れも電気や機械の修理も、もちろんプロのようにうまくは出来ないけれど、大体のことはなんとなくできるようになった。
お店や家や工場で使う家具なんかも、全部自分で作るようになった。
本当の意味での「理想の空間づくり」は7年が経った今でも、相変わらず「継続中」ではあるけれど、それを自分自身が考えて、ほとんどのことを「自分の手」で出来るようになったこと。
それは僕にとってはとてつもなく大きな変化であり成長だ。
それだけでも、この空間を作った価値があったなぁっと、今ではしみじみ思う。
おっと、ちょっと話が横道に逸れてしまったけれど、そんな日曜大工の経験からはじきだした、DIYをする上で、僕が最低限必要だと思う電動工具・・・
それは「インパクトドライバー」と「丸ノコ」だ。
極論を言えば、この2つがあれば大概のモノは作れる気がする。
もちろん、電動工具以外にもスケールやハンマー、ペンチにニッパーなどなど、細かい道具はいくつもあるけれど、そこらへんの細かい工具は贅沢を言わなければ、それぞれ千円以内で購入できるものばかりだから、一通り揃えるのにそれほど大金はかからない。
インパクトドライバーとは簡単に言えば電動のネジまわしみたいなもんだ。
ネジやボルトの締め付けはもちろん、先端のビットを付け替えることで木や鉄などへの穴あけもできる(本来それぞれに専用工具はあるが)ため、何は無くともこれだけはないと話にならないというほど優秀な工具。プロ仕様になると4、5万円ほどするが、1万円前後のものでも十分に使えるので、これだけは1番に買うべし。
電動丸ノコは、文字通り丸い回転する刃の付いた電動のノコギリ。
小さな犬小屋を作るくらいなら手ノコでもなんとかやれなくもないが、それ以上の作業になるとさすがに手ノコではきついし正確性にも欠けるので、やはり電動がおすすめ。
ただし、高速で回転する「刃」が付いている工具なので、インパクトドライバーと比べても慣れないうちは大怪我をするリスクもあるので、最初のうちは誰かに教わるか細心の注意を。
でも最近はホームセンターでも購入した木材を正確にカットしてくれるので、切るのが怖かったり億劫な人は頼んでしまうのもアリですね・・・
作業のスピードや効率性、正確性などを考え出すと無限に増えていく、増やしたくなる工具類ではあるけれど、半年間の作業期間の中で、最も登場回数が多かったのがこの2つの電動工具。
丸ノコで木を切り、インパクトドライバーネジで締める。
この空間1つを完成させるために、いったい何本(枚)の木を切り、何千本のネジが締められたことか・・・
通い慣れたホームセンターの少し手前で車を止め、前から気になっていた金物屋さんに入ってみる。
やけに詳しいおばちゃんにあれやこれやと小一時間ほど話を聞いて「自分用」のインパクトドライバーと丸ノコをついにゲット。
ホームセンターでももちろん良いんだけど、そこはほら、気分ですよ気分・・・なんか、プロっぽいでしょ?
なんだか、やけに嬉しかった、やけに記憶に残っている1日。
なにはともあれ、まずはカタチから。
このあとアメリカンな分厚い革の腰袋を買って、ペンチやハンマーなどの工具をホームセンターで揃え、それを全部詰めこんで、家でわざわざツナギに着替え腰袋を装着し、鏡の前に立ってニヤついたのは言うまでもありません・・・・かね。