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%e7%b2%be%e7%a5%9e%e3%81%a8%e6%99%82%e3%81%ae%e9%83%a8%e5%b1%8b:Volume:03 「バランス」を大事に生きてみたけれど・・・

2019.12.1

 

 

何事もバランスが大事。まぁ、確かに。分かる気がする。

 

でも、仕事や人間関係に関しては、いわゆる「栄養のバランスを」といった感覚とは少し違うバランスの取り方を最近は心がけている。

 

自分で言うのもなんだけど、僕はもともと「バランス人間」だった。

中高生の頃からいつだって周りの友達の顔色をよく観察し、嫌われないように、争わないように、仲間内でも争いが起きないように振る舞ってきた。

だからあまり人に嫌われた覚えもないし、争いに巻き込まれることもほとんどなかった。

 

その頃は、バランスとは「相手にうまく合わせること」だと思っていた。

「空気を読む」ことこそが「バランスをとる」ことだと思っていた。

誰からも嫌われないように、誰からも好かれるように。

そのために、「良い人」を必死に演じる自分がいる。

それはいつだって、「他人の目」から見た自分。誰かにとって「良い人」の自分。

良い人の基準を他人に置くと、その基準は相手によってコロコロ変わる。

あの人に会えばこういう自分。この人に会えばこういう自分・・・そんな風に誰かに合わせ、一生懸命バランスをとって生きていると、次第に「自分」がどんどん失われていく。

自分は何がしたいのか? 何が好きで、何が嫌いなのか?

いや、本当は心の奥底ではわかっていた。誰が好きで、誰が嫌いかも十分わかっていたけれど・・・

それ以上に、誰かに嫌われることやひとりぼっちになることの方がが怖かったから。

だからいつも、心の中では「ツマンネ」っと思っていても、へらへら笑っていた。

一人ぼっちが怖いから一緒にいても楽しくない仲間たちと多くの時間を共にした。

そしてなにより、そんなふうに生きている自分自身のことが、誰より嫌いだった。

 

そんなふうにいつも一生懸命「バランス」をとっていたにも関わらず、それによって僕が得たのはたくさんの「知り合い」と「嫌われない自分」くらいのものだった。

一番欲しかった「親友」や「相棒」なんてものはさっぱりだった。

 

今になって思えば、そりゃあ、そうだ。

相手に合わせるために自分の感情を押し殺して、いつだってニコニコ、ウンウン・・・

自分の中に作る「心の壁」。それはそのまま相手と自分の間を隔てる「壁」だ。

その壁をまず壊さない限り、相手との距離は埋まらない。

「誰からも嫌われない」ことを1番大切にすると、結局「誰からも愛されない」。

じゃぁ、その壁を壊すには?

愛し、愛される人間になるには?

その答えは本当に、意外なところにあった。

その当時の僕から考えれば、まさに「真逆」のところに。

 

 

 

僕が「バランス」を取ることをやめたのは本当に偶然がきっかけだった。

 

20歳の時に2つ上の兄貴がバーをやり始めたことに影響され、自分でもバーをやろうと思った。

小学校からの幼なじみ、高校時代の部活の友達、そしてその友達や先輩、後輩、総勢6人。

6人いるとはいえ20歳そこそこの未経験の金なし君たちがバーを始めようってんだから、オープンまでの道のりは甘いもんじゃなかった。

1ヶ月ほどで1人150万円ほどのお金を「借りてくる」必要があった。

なんてったって、この時は週に3日ほどミニストップでアルバイトする程度で、貯金なんてゼロに近かった。売るほど価値のあるモノなんて手元に1つもないし。

試しに20歳になった次の日にアコムやプロミスなどの消費者金融をまわってみたけど1円も借りれない。

親に借りるのだけはダメ。それが皆で決めたルール。

となると・・・

残るは「友達」だけだ。

ここまでくると腹をくくるしかなかった。

小学校から高校までの卒業アルバムや連絡網を引っ張り出し、「名前と顔が一致する人」全員に印をつける。

そして、片っ端から電話をかけまくる・・・

 

・・・・プルルル・・・プルルル・・・ガチャッ

「あ、もしもし、◯◯くん? オレ小学校時代の同じクラスだった高橋だけどさ・・・・お、覚えてる?」

「たかはし?・・・・・・・おぉっ、みのる? 覚えてるよ〜、ひさしぶりぃ〜。どうしたの?」

「ごめんね〜、久しぶりで悪いんだけどさぁ、オレ、今度お店始めようと思ってさぁ・・・・」

「おぉ、それはすごいじゃん! できたら行くよ〜」

「うん、ぜひ来てよ〜。それでさ・・・・今、お店作るのにお金が足りなくて・・・少しでいいから貸してもらえないかな? あ、もちろん借用書とか、ちゃんと作るからさ」

「・・・・・・・・」

「だ、だめかな?・・・・」

「久しぶりに電話してきたと思ったら、いきなり金かぁ・・・ごめん、今、俺も金ないからさ・・・・わるいけど・・・」

「ご、ごめんねぇ、そうだよね・・・お金ないよね。ごめんね、なんかいきなりで・・・なんか怪しすぎるよね。お店ができたらその時は是非遊びにきてよぉ。それじゃね」

ガチャッ・・・・ふぅ・・・・

という気まず過ぎるやりとりが当然のように幾度となく続いた。

 

その度に心が折れそうになりながらも、最終的には150万円という金額を集めお店を始めるわけだけれど・・・その話はまた別の機会に。

 

この「借金」をするために20歳までにできた知り合いや友人、そして幼なじみや数少ない仲間たち「ほぼ全員」に電話をかけ、時には直接会ってこの話をしたわけだ。同時に、それによって20年間作ってきた自分の歴史、すなわち「これまで自分が作ってきた人間関係」ってやつを全て「再確認」するハメになったわけだ。これはほんと、レアな体験だった。

 

お金ってやつは見方によってはすごく面白いモノだ。

相手と自分で作ってきた「人間関係」がそのまま「貸すor貸さない」の「結果」に現れた。それは「信頼関係」や「友情」と言ってもいいかもしれないけど、要は「信用」の問題だ。どれだけその相手と「深く」関わってきたか? それがそのまま「お金」を通して見えた気がした。

バランスを取ることで誰にも嫌われず、誰にでも快く思われるように振る舞ってきた中高生時代。その結果はほんと、散々だった。

 

精神的にはかなりの痛手を伴いながらも、この体験のおかげで自分が今まで作ってきた「人間関係」が、人との関わり方が「間違っていた」ことを痛感できた。

「このままじゃ、ダメだ」と心底思えたことは大きかった。

 

そしてもうひとつ。

借金をすることも大変だったけれど、それを含めて、お店を始めるということは、とにかく最初は大変なことだらけだった。なんてったって、なんもわからないんだから。

だから、とにかくイッパイイッパイの毎日で、カネも睡眠時間も全くなかったから、「バランスを取る」なんていう心の余裕も次第になくなって、いつの間にか「自分」がむき出しになることが増えた。

6人みんなが同じように余裕がないから、同じようにむき出しの感情で接すると、当然のように争いや喧嘩が増える。

でも、中高生の頃なら一番恐れていたであろうこの状況は、意外にもすごく心地よかったのだ。

これは本当に意外だった。

自分の感情を抑えずに、話し、酒を飲んで語り、時には喧嘩もするけれど、自分の心の中の想いや感情を外に出せば出すほど、相手との距離が縮まっていくのを感じた。喧嘩すればするほど関係が深くなっていくの実感できた。

 

そんな体験をしたことで、僕自身は「人との関わり方」を学んだ。

それは中高生の頃に考えていた「バランスの取り方」とはまるっきり逆のものだった。

 

 

つづく

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